皆さんの家ではどんな建具を使われていますか。
使う場所によって引き戸や開き戸を使っているという方が多いかもしれませんね。
今回は建具の種類とその使い方、特に引き戸について取り上げます。
●建具の種類
建具を開閉方法別で分けてみると、「開き戸」「引き戸」「折れ戸」の3つに分類できます。
- (1)開き戸
- 一般的な洋室で最も多く用いられている建具です。1枚ドアを開閉する片開き、2枚のドアを開閉する両開き、大小の2枚のドアを持つ親子ドアがあります。
開き戸の場合は、ドアの開閉部分のスペースが必要なので、使い勝手に合わせて幅やサイズ、内開きか外開き、左右どちらを吊元とするか等を検討しましょう。動線を妨げずに危険のない開閉方法とすることがポイントです。
- (2)引き戸
- 引き戸といえば、ふすまのように和室におくものというイメージでしたが、最近は洋室でも問題のないデザインやスタイルが増えています。スタイルは、片引き戸、引き違い戸、引き込み戸、引き分け戸などに分かれます。
引き戸を設置するには、戸を納めるための壁が必要です。しかし、横にスライドさせるため、開き戸のような開閉スペースが不要な分部屋が広く使え、開閉動作も楽になります。また、通風を確保しやすいため、換気もしやすいです。ドアを開けておけば、部屋を連続させて使うことも可能ですし、空間に変化を持たせることもできます。
- (3)折れ戸
- 蝶番などで連結させた扉を折りたたんで開閉する建具です。開き戸よりも開閉スペースが少ない形状のため、トイレや洗面室などの水まわり、廊下などの狭い空間の収納扉等に用いられることが多いタイプです。
開閉がしやすいかどうか、小さいお子さんがいる場合などは、指を挟むなど怪我のしにくい工夫がされているかどうかも確認しておくとよいでしょう。
●建具の素材
建具の素材は樹脂シート仕上げ、突き板仕上げ、無垢材等の木質系のほかアルミなど金属系もあります。
- (1)樹脂シート仕上げ
- 合板やMDF(中質繊維板)など木材繊維に接着材を添加、成形した建材を下地として、木目などの模様を印刷した樹脂シートを張った素材です。柄やデザインが豊富なのが特徴です。
- (2)突き板仕上げ
- 天然木を薄くそいだ板(単板)である突き板を、合板やMDF(中質繊維板)などの基材に接着し、塗装を施し仕上げた素材です。肌触りのよさや木目の美しさなどが魅力です。
- (3)無垢材
- 深みのある素材感、風合いが、長く使っているうちに味わいとして出てくるのが特徴です。
- (4)アルミ
- シンプルでシャープなアルミフレームを用いた素材です。採光パネルや木質パネルと組み合わせた素材もあります。
●開き戸<引き戸の理由
引き戸は開き戸のようにドア前に大きな面積を必要としないので、その分の面積を有効活用することができます。またドアの開閉もドアを横に引くだけなので出入りが楽にできます。さらに、引き戸は開け放っておいても風に煽られて閉まることはなく、身体をひねらず開閉できるので車いすでも楽に通り抜けができる等のバリアフリーから見てもメリットがあります。
●引き戸を用いる場所
- (1)洗面所、トイレ、キッチン
- キッチンは物の出し入れが頻繁なため、引き戸にするほうが食器棚も開けたままにでき、ドアが邪魔にならず便利です。
また、トイレや洗面所も頻繁に利用する個所です。引き戸にすることで開閉も横に動かすだけなので操作しやすくなり、車椅子の方にも使いやすいでしょう。
- (2)間仕切り
- 出入り口の扉としてだけではなく、間仕切りや家具などにもよく使われています。左右に開閉するため、開閉のための動作域が少なく、開けた状態でも邪魔にならなないのが大きなポイントです。例えば、開け放して広々とさせたい、必要に応じて間仕切れるようにしたい、来客時に作業スペースの目隠しをしたいといったときに使いやすい建具ですね。
- (3)浴室
- 浴室を引き戸にするとドアを完全に開けることができるため、高齢となり足腰が弱って車いすでの生活になってしまった方でも、介助者と一緒に車いすのまま浴室に入ることが可能になります。
●様々な機能を持った建具
- (1)音に配慮したドア
- 機能を持つ建具といえば、防音ドアを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。一般的な住宅のピアノ室やリスニング室等に向けての防音ドア商品の種類も増え、デザイン性の高いドアも豊富になってきています。
また、本格的な防音ドアだけでなく、日常の生活騒音が気にならない程度の遮音・防音効果のある建具も各社より提案されています。最近では、開き戸だけでなく、引き戸タイプでもみられるようになりました。このようなドアは、寝室や書斎、子供部屋やトイレに向いているでしょう。
- (2)換気や通風が可能なドア
- 家の中に自然の風の通り道を確保することができる建具です。建具にルーバー等を組み込み欄間を組み合わせることで、建具を閉めたままでも風を取り込むことができます。
湿気がたまりやすいキッチンやトイレ、洗面所等の水まわりに向いているだけでなく、ルーバー等によって部屋の中の気配を感じることができ、子供部屋でも使えそうです。
- (3)誰にでも使いやすいユニバーサルデザイン
- 高齢者や小さな子どもでも使いやすく、安全に使えるような工夫を施した建具です。2〜3枚連動タイプの引き戸は、車椅子に座ったままでも開閉しやすく、上吊りで床面がフラットになる引き戸であれば、車椅子も通りやすくつまづく心配もありません。
また、わずかに開けば自動で全開し自動で閉まる機能、自動でゆっくりと閉まる機能などを持った建具も増えてきました。閉め忘れを防ぎたい場所、閉まる時の衝撃音を押さえたい場所に向いています。
トイレや洗面所では、緊急時に外から開けることができる機能を持つ建具を、浴室につながる洗面所では、チャイルドロックを取り付けることができる建具を選ぶと安心です。
- (4)ペットの動きを考慮したドア
- 室内で犬や猫とともに暮らす家庭にとって、ペットが自由に動いても妨げにならないドアがあると安心です。それがペットが自由に動き回れるように工夫されたペットドアです。
ペットドアは、建具にペット専用の小さなくぐり戸がついているドアのことで、ペットが出入りするたびにドアを開閉する必要がないのが特徴です。選ぶ際には、ペットとくぐり戸部分のサイズ、ストッパーなどの使い勝手も確認しておきましょう。
- (5)リフォーム向けや災害対応のタイプ
- リフォーム時に設置しやすい建具も多く販売されています。既存の開口部に後からでも施工しやすく空間に馴染むような工夫を施したものは、施工が簡単なので、工期も短くなるのが特徴です。その他、建具の上部が独立して開閉できる災害対応の開き戸などもあります。上部だけが開くので、地震で倒れた家具など足元に障害物があっても開放できるのがメリットです。
引き戸はバリアフリーでも活躍しそうな建具ですね。
でも、すべてを引き戸にするのではなく、使う場所に応じてどうするかを決めましょう。